フェアレディZ 432は世界的にみてもスポーツカーミュージアムのマストアイテムというべき存在。それゆえ昨今その価値は非常に高まっており、その背景にユニークな物語性と高い商品性(デザインやエンジニアリング)に加えて、生産台数500台以下という一級コレクターズアイテムの世界的な条件に合致しているからに相違ありません。
とはいえ高度なメカニズムを持つS20を量販モデルに積むわけにもいかず、丈夫で懐の深く扱いやすいL型6気筒エンジンがスタンダードモデルには搭載されることとなりました。日本仕様は税制の観点(5ナンバー維持)からも2LのL20搭載にとどめられました。その代わり同じ2Lながら高性能を発揮するS20エンジンを最高峰グレードに搭載したというわけです。その最高峰グレードこそがZ432でした。数字の意味はよく知られているように「4バルブ3キャブレター2カムシャフト」を意味します。つまりS20エンジンを積んでいると宣言する車名を与えたのです。
Z432のエンブレムを付けたフェアレディZは、モータースポーツでの活躍もあって一躍、クルマ好きの憧れになります。後の240ZGと同様、当時はスタンダードモデルを“それ風”に改造することも大いに流行しました。現代においてもその人気が衰えることはなく、フェアレディZ史を代表する一台として不動の地位を保ち続けているのです。またモータースポーツ用のベース車両として特別な仕様のZ432Rもごく少数が生産されています。現存する台数は十数台と言われており、そのぶん価値は天井知らずで、現在では60万ドル以上で取り引きされているようです。